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- 覚えておきたい、医療用ウィッグの上手な選び方
医療技術が進歩して不治の病というより、長く付き合う病になってきた、がん。髪に影響が出る治療中も自分らしく過ごすために、医療用ウィッグを使う人が増えています。医療用ならではの気配りがされたウィッグについて、専門家に教えてもらいました。
社会とのつながりを失わないために
日本では2人に1人がかかるとされる身近な病気、がん。高齢化により、がんの罹患数は増えていますが、早期発見や効果的な治療が進み、がんの生存率も高まっています(詳しくは「国立がん研究センターがん情報サービス」)
がんが長く付き合う病気となり、抗がん剤などによる髪の変化があっても社会とかかわりながら生活ができるように、医療用ウィッグを使う人も増えてきました。
家族や自分のもしものときのために、経験豊富なウィッグアドバイザーにお話を聞いてきました。
教えてくださったのはウィッグアドバイザー:川本眞利子さん
今回、取材にご対応くださったのは、アデランスの教育担当兼ウィッグアドバイザーの川本眞利子さん。ファッションウィッグブランド「フォンテーヌ」の販売を7年経験後、現在はウィッグアドバイザーの教育担当として後進の指導にあたっています。
たくさんのお客様を医療用ウィッグで笑顔にしてきた経験から、外見的なケアの重要性を深く感じてきたと言います。
外見の変化もケア、生活の質を高める
抗がん剤による副作用で髪が抜けてしまったとき、一番つらく感じるのは、容姿が変化したことよりも周囲から「がん患者」として注目されて、いつもの自分らしくいられないことだと言います。
今、がん治療の一つとして大切にされるようになってきたのが、アピアランス(外見)ケア。治療の副作用による外見の変化がもたらすストレスを軽くして、前向きに安心して治療が続けられるようにしようというものです。
「この10年で2割ほど、医療用ウィッグを使われる方が増えているように感じます。がん治療を継続しながら会社員として働き続けている方もいらっしゃいます。治療による外見の変化がつらくて誰とも会いたくなくなってしまった場合でも、ウィッグを着けてから驚くほど明るくなり、以前と同じように出掛けられるようになった方々もたくさん見てきました」と川本さん。
サロンだけでなく、自宅や病院へ訪問もあり
アデランスでは医療用ウィッグ専門ブランド「ラフラ」を展開しており、サロンでは毛髪診断士資格を持つカウンセラーがさまざまな相談に乗ってくれるのだそう。
「抗がん剤治療の副作用による脱毛から発毛までの流れ、治療中の頭皮や髪をケアする方法、髪と同じように影響を受ける眉やまつ毛のカバーの仕方などもご説明しています。ウィッグの使い方だけでなく、外見的な変化にともなうお悩み全般に寄り添うように心掛けています」(川本さん)
カウンセリングルームはプライバシーが守られるように配慮されており、入院や通院時に立ち寄れるよう病院内に設置されたサロンもあります。また、希望があれば病院や自宅まで出向いてカウンセリングをしてくれます。
「すでに抗がん剤治療を始めているお客様のお宅へ伺った際、窓もカーテンも閉め、電気を点けることもできない状態だったことがあります。まだ髪に変化はありませんでしたが、カウンセリング中もずっとタオルで顔を隠されているほど、ふさぎ込んでいらっしゃいました」(川本さん)
1か月後、希望どおりにボブスタイルのウィッグが仕上がり、あらためて訪問。
「ウィッグを着けた途端に目に光が戻って、背筋がスッと伸びて別人のようになった様子は今でも忘れられません」と川本さん。
医療用ウィッグ選びのポイント
脱毛の影響が出やすい抗がん剤を使った場合、およそ2週間後から髪が抜けてくるのだそうです。
ウィッグにはさまざまな種類がありますが、オーダーメイドにすると仕上がりまでに1か月ほどかかるので、早めの準備をおすすめしているとのこと。さらに、住んでいる自治体によってはウィッグの購入に助成金が使えることもあるそう。
もし医療用ウィッグが必要になったときは以下のようなポイントを知っておくと、負担やストレスが少なくてすむそうです。
【覚えておきたい、医療用ウィッグ選びのポイント】
1. 準備開始は1か月半前までに
抗がん剤の副作用やウィッグの仕上がりを考えると、治療開始の1か月半くらい前には準備を始めておくと気持ちの負担が少なくなります。
2.自治体の助成金を調べる
住んでいる自治体によってはウィッグ購入費の助成制度があります。例えば東京の足立区では費用の2分1、ウィッグ3万円まで負担してくれます(2024年2月現在)。助成制度の一覧はこちら。
3.自分の希望を整理しておく
購入の前に希望のヘアスタイル、予算、生活やファッションの傾向を整理しておくとスムーズで失敗も少なくなります。
4.医療用ウィッグマークの有無
頭皮への刺激、洗濯や汗での堅牢度(退色や色移りのしにくさ)など、医療用ウィッグとしての基準を満たした「M.Wigマーク」を取得していれば安心。
5)サイズ調整ができるタイプを
治療の副作用によって髪が抜けてから生える間に頭囲が変化します。ズレを防ぐためにも、サイズ調整ができるタイプを選びましょう。
6)通気性をチェックする
見栄えを良くするために人工皮膚が付いているタイプもありますが、頭皮や髪には通気性の良さが大切。裏側はメッシュがおすすめ。
品質保証のマーク、どんな性能を満たす?
病気や治療によるデリケートな頭皮や髪を守るのが医療用ウィッグ、2015年からウィッグとしては世界初の国家規格が制定されています。それが先ほども述べた「M.Wigマーク」で、がんや脱毛症で悩む人が安心して使えるように性能基準を満たした製品であることの証です。
もう少し詳しく紹介すると、M.Wigマークの製品は産業標準化法(JIS法)に定められた以下の4つの試験に合格しています。
- 皮膚への影響を判定するパッチテスト
- 洗濯による退色や色落ち、他の洗濯物への色移りの試験
- ホルムアルデヒド試験
- 汗による退色や変色および重ね着した衣服への色移りを評価する試験
人目を気にせず、白髪染めや頭皮ケアも
アデランスの医療用ウィッグは、ファッションとしてのウィッグに比べて低価格に抑えたラインナップになっています。
レディメイド(既製品)は3万9600円(以下、すべて税込)~、オーダーメイドは29万7000円~、気になるところだけの部分タイプは6万9300円〜です。
ウィッグの素材は人毛、人工繊維、ミックスと、好みや手入れのしやすさなどを基準に選ぶことができます。
平均して1年くらいウィッグを着ける人が多いとのことで、購入して終わりではなく、充実したアフターサービスも好評です。レディメイドでもカットやサイズ調整は無料ですし、シャンプーセットも6回まで無料になっています(期間制限あり)
病院内のアデランスサロンでは、白髪染めから頭皮クレンジング、炭酸シャワークレンジングといったリラックスメニューも用意されています。人目が気になる治療中であっても普通のヘアサロンのような施術が受けられる場所があるということも、心の支えになりますね。
これまで髪の変化に悩まれる、多くのお客様をウィッグでケアしてきた川本さん、
「最近の医療用ウィッグは進化し、頭皮や髪が蒸れる、いかにもウィッグだとわかってしまう等のデメリットはありません。ウィッグを着けることで周囲の視線が気にならなくなり、行動範囲が広くなったり、社会とのつながりを取り戻したりとメリットのみだと喜ぶ方がほとんど」とのことなので、安心して相談してみてはいかがでしょう。
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